今回、上達のロードマップのアドリブ講座2にご参加いただきありがとうございます。解説に時間がかかってしまいまして、演奏の時間がほとんど取れなくてすみませんでした。

レイヤー方式の概念とフレーズを理解していただき、フレーズの作成と演奏まで予定しておりましたが、最後は模範演奏をしていただいたところで終わってしまいました。

ただ、前回ご参加のサックスの方が最後に模範演奏していただいたので目指すところはイメージしていただけたかと思います。実際に、お配りした資料でやってみていただければ今回の内容はそれほど難しいことではないと思っていただけると思います(初心者向け)。

なので、配布できなかった前回の資料をお送りするとともに、今回の講座をおさらいの意味で解説し、補足をさせていただきます。お時間のあるときに見返していただければ幸いです。

なお、講座の冒頭にお伝えしました前回の講座ですが、ご参加していない方にもここの部分を知っていただきたいので、レイヤー方式のアプローチを少し補足したうえで、1回目でお配りしたレイヤー1の補足資料(下記にてダウンロード)をお送りします。
今回講座のおさらいと配布資料をと合わせて参考にしてください。

■そもそも、アドリブのレイヤー方式とは・・・

浦島先生が長年生徒さんを教えていかれて、もっとも上達に効果のあったアドリブのアプローチ方法です。

第一レイヤーと第二レイヤーの2層で考えていくことで、ジャズの理論やコードの知識のない方にも段階的にジャズらしいアドリブへ上達していく方法で、アドリブのアプローチ方法のひとつと考えてください。

この第一レイヤーはブルーノートペンタトニックスケールを使った5音です。コードに関係なく、その曲のキーのブルーノートペンタトニックスケールを使えば、曲全体をコードに関係なく、6音で演奏できてしまいます。その曲の調の並行調のマイナーペンタトニックスケールの♭3に♭5のブルーノートがあるので、ブルージーさが加味できる便利なスケールです。

ただ、問題はそのスケールだけでは単調になってしまうこと、またスケールをそのまま演奏するだけではだめなので、ジャズらしい並べ方のフレーズを4パターンに絞った資料を意しています(下記ダウンロード)。そのポイントを押さえたうえで、第二のレイヤーではスパイス的にフレーズを乗せる(差し替える)だけで十分です。ここではコードの一部をつかって、ルールに沿った短めのフレーズを考えます。主に曲のダイアトニックコードでない、転調しているコードの音に入れていくといいでしょう。

コードを難しく感じるかもしれませんが、セッションででてくるキーはコンサートで、F、Bb、Ebの順で多く、そのキーの曲から練習することで、同じコードが出てくるので否応でも覚えていきます。また、コードの音はジャズの曲のメロディにも多く使われており、それがどのようなフレーズになっているのかも理解できるということを今回の講座で解説しました。

とにかく、レイヤー方式をシンプルに例えれば、第一のレイヤーは何にでも合う白いご飯(土台)、その上にちょこっと第二のレイヤーフレーズの海苔や、明太子、卵をのせる発想です。ご飯が多いから、味にブレがない。そしてそこにちょこっとアクセントを置くからおいしさが際だつというものです。慣れてくれば、そのうち、焼き肉やキムチ、鰻といった主張の強いもの(ジャズ言語のツーファイブフレーズ)を入れ込んでいくというのが、ステップとして上達が加速する順番なのです。

ジャズのアドリブのアプローチ方法は多彩であり、どの方法を使ってもいいのですが、それだけに選択肢が多く、何をやっていいのかわからない、なかなかジャズらしくならないとか、ぎこちない演奏になってしまうという悩みを持つ人にはこの方法から段階を経ていくことがお勧めです。

今回のレイヤー方式は、そうしたアプローチに悩んでいる方、そのレベルまで達していないと思っている方、ジャズのコードや理論についていけないと思っている方にとっても、最初にやっておくべきステップといえるアプローチ方法です。

0-1ベースの方でも、今回の方法でジャズのアドリブの階段を一歩ずつ登れる人ができるということを浦島先生のレッスンの生徒さんで実証されているそうです。

そのステップを少し整理すると、初心者のアドリブの段階には下記の段階があります。

・0-1段階→まったくジャズのアドリブをどこからやったらいいかわからない人(ステップ1)
・1-10段階→少しはコードもわかり、演奏はなんとなくできるが、その先に行けない人(ステップ2)
・10-20段階→演奏がジャズらしくならない、演奏に変化や発展がない人(ステップ3)

そしてそれぞれの段階のアドリブのステップを2つのレイヤーの比率で整理したものが下記の図です。

ステップ1から3までありますが、ご自身がどのレベルにあるかを考えていただき、ステップ1か2の場合は、レイヤー1を土台にそのうえで、今回のコードを入れたスパイス的なフレーズを混ぜ込んでいただくことになります。

本当にまったくコードがわからないという方も、後ほどお配りした資料をもとにフレーズを作る手順をステップ2のところでご案内いたしますので、まずはご自身がどのタイプかを確認しましょう。そこで書かれていることからやってください。

【ステップ1まだコードが全然わからない&講座1回目を出ていない方】は・・

ここの方は、最初は今回お送りするレイヤー1資料を使ってNowTheTimeの曲(ブルース)を演奏してください。
比率的には今回ダウンロードしていただくフレーズが、曲のほぼ100%に近い人もいるかもしれません。とにかくレイヤー1の4つのパターンをいろいろ組み合わせて、そこで自由自在に演奏できることができるようになったら、今回のレイヤー2のフレーズを一部にトッピング(2小節差し替える形で)していきます(資料:Now the Time<ADLIB>参照)。(Now the Timeの曲は黒本157P を見て下さい。ない方はこちら

ゆとりでレイヤー1で曲を演奏できた方は、Now the Time<ADLIB>の中以外に、ご自身で2小節の短めのフレーズ(スパイス)をひとつ作ってもらい、それを自在に演奏できるレイヤー1に入れて演奏しましょう。スパイスを新たに振りかけていただくイメージです。

必要な譜面を下記からダウンロードしてください。これは酒バラでの例ですが、ブルーノートペンタトニックスケールはキーを関係なく使えるフレーズです。例えばFのキーの曲だとDのブルーノートペンタトニックスケールの中の音を自由に組み合わせます。2小節が繰り返しパターンになっていますが、この2小節の4つのパターンを繰り返すのもいいですし、他のを混ぜて好きに組み合わせていただくといいでしょう。

資料1:1回目のレイヤー1のフレーズ資料ダウンロード】
◆C譜ピアノ・ギターはこちら ※Fキーの曲なのでDブルーノートペンタトニックスケールは共通です。コードは無視します。
◆Bb譜トランペットはこちら・テナーサックス&ソプラノサックスはこちら ※Gキーの曲なのでBbブルーノートペンタトニックスケールは共通です。コードは無視します。
◆Eb譜 アルトサックスはこちら ※Dキーの曲なのでBブルーノートペンタトニックスケールは共通です。コードはコードは無視します。

資料2:ブルーノート・ペンタトニックスケール※一覧(参考資料)ダウンロードはこちら

※ブルーノートペンタトニックスケーはマイナーペンタトニック+1音の6音だけ。①➁③④の中の2小節繰り返しを自由に(例えば①と③というようにコード関係なく)組み合わせて演奏してください。詳細は、1回目の講座の方で解説していますが、今回の曲もレイヤー1で演奏してみましょう。(このスケールのフレーズは自分で作るとうまくいかないケースが多いので慣れない人はこのフレーズをまずやってください)

ブルージーな音使いが土台になっているので、ジャズらしさがでた演奏になっています。そこを確認しながら演奏してみてください。

【ステップ2 少しコードはわかるけれど、作り方がわからない方】は・・

少しコードとか慣れてきた人は、自分の知っているフレーズや、手癖のフレーズに頼りがちです。ここが限界点になっています。何年たっても、自分の演奏が上達しないなと思うなら、そのフレーズの音型のパターンや、音程のパターンが同じになっているケースが足かせになっているのが考えられます。

今、ある程度演奏できる人は、逆にご自身の演奏の中に1のレイヤーのブルージーなフレーズパターンをいつもの演奏に混ぜて演奏してみると変化が生まれます。(2小節パターンのどれかを差し込む)

そこができた段階で、次にコードにじっくり対峙していくためにご自身で短めフレーズを実際に譜面化して作っていきましょう。

【手順&ポイント】
①注意点は、コードの音を強拍(4つある表の拍のどこからでもいいので)にコード音のどれかを起点に入れてフレーズを作ってみましょう。お渡しした資料「和声外音のイメージ解説」を参考にしてみましょう。

➁コードの音も4つあるからどこからやっていっていいかわからないとクラクラするかもしれませんが、資料をもとに、資料の中の6つの選択肢のどれかの音を選択するところから初めてください。それができれば、次の音、次の音と選択してみてください。

最初は8分音符を中心にリズムをそろえるのもいいです。
飽き足りなくなったら、資料「和声音と非和声音(和声外音)の使用例」を参考にこの中の、リズムパターンを抽出し、そこに音を刺繍していくのもいいでしょう。

まずは、はめ込む2小節を作ってみたら、これとステップ1のレイヤー1資料の譜面を土台に、好きなところでご自身のフレーズを入れ込んでみてください。ツーファイブの事前練習のようなアプローチになりますが、この自分フレーズの割合や、新しいフレーズを増やして比率が高まるほどステップ3に近づきます(講座で模範演奏していただいた感じです)。

コードの音を自分で考えていくことで段々とコードの流れが理解できるようになります。

【ステップ3】の段階に達した方は・・

ジャズのアドリブでは、ツーファイブといわれるジャズによくでてくるコード進行のフレーズを覚えて自分のアドリブフレーズを入れていくというアプローチ方法があります。

実は、この方法はあまり演奏に慣れていない人、自分がどういう音の流れで演奏しているかわかっていない人が演奏すると挫折する率の高いものです。特にジャズに慣れていない、コードの音が理解できていない場合、ツーファイブ以外の演奏のところを何を手掛かりに演奏したらいいかと悩む人が多く、実際にはそこで挫折している人もかなりいます。

ツーファイブフレーズ集などを買っても無駄になったという人はここが原因です。
自分のフレーズと混ぜて練習をするようにとよくいわれますが、フレーズの流れをわからない人が、ツーファイブフレーズを前後の関係をみて入れ込むのは難しく、さらにはその位置を正しく入れるのもハードルがかなり高くなっています。

もし、レイヤー2のフレーズを作るのが難しい人は、Now the Time<ADLIB>の資料からか、簡単なツーファイブの2小節ものを練習して、レイヤー1に入れることをやってみるといいかもしれません。

ステップ2を通り越して、ステップ3のツーファイブのアドリブアプローチに進みたい方は「岡崎好朗さんのアドリブフレーズ研究(3回)」をお勧めしますが、そこで学ぶフレーズは、お配りした資料「和声外音のイメージ解説」、資料「和声音と非和声音(和声外音)の使用例」を参考にして、音がどのような関連性できているかが理解していくのもとても勉強になります

なぜ、それをお勧めするかというと、単に書かれているフレーズを覚えて演奏することは、機械的なはめ込みでしかなく、作業的な演奏の域をでなくなってしまうためです。

覚えたツーファイブフレーズも、この音のしくみがわかれば、自分なりにバリエーションを付けることができ、1つのフレーズを前後の関係などで何通りにも発展させていくという考え方ができます。ジャズの演奏のレベルアップには、ステップ2の基本的な考え方を知っているか知らないかが大きな差となっていくのです。

【最後に】

と、長くなってしまいましたが、よく初心者の方からコードや理論を覚えていくのが大変だから、なんとか簡単にアドリブできませんかという声をよく聞きます。

しかし、形だけ整えて演奏したところで画一的な演奏になってしまいます。聴き手には「ああ、あのフレーズを丸覚えしてるね」と聴こえるだけです。単に演奏をこなしているだけです。

実は、長く演奏しているという人にもこういう人が多いのです。一方で、聴いていて楽しい演奏だったり、心に入ってくる演奏となると、やはり一音一音を大事にした演奏が心に響いてくるものです。

じっくり時間をかけてコードと向き合うことは大変かもしれませんが、後々に影響してきます。「急がば回れ」といいますが、音楽(ジャズに限らず)の理解を深めることは大変としても、コードの部分はジャズをやるからには避けて通れません。しかし、岩場を一歩一歩踏みしめて登ったからこそ、山頂に到達するときの達成感や喜びは何ものにも代えられないのです。手軽に便利にということでは、手に入らない充実感と、自分の心が選んだ音がそこにあるのです。

ジャズの世界に入っていって多くの人がその魅力から抜け出せなくなるのも、こうした時間を積み上げてきたからこそなのかもしれません。ジャズを選んだからには、ぜひ、その楽しさに触れていただきたいので、ここは踏ん張りどころですので頑張ってくださいね。応援しています。

長文になりましたが、ご参加いただきありがとうございました。

 

ご質問のある方は、講座の質問というタイトルで、maderate23@yahoo.co.jpまでご連絡ください。確認しまして、折り返しお返事させていただきます。